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馬鹿のイワン (12)

ivan
The Story of Ivan The Fool
馬鹿のイワン (12)

     By Leo Tolstoy
      レフ・トルストイ 作     

◇ このテキストの英文は Classics Ethereal Library
   から転載しました。
   和文は 青空文庫の菊池寛 訳 「イワンの馬鹿」
   ゆうこが修正を加えたものです。

【 朗読 】
◇  英語版朗読 ・・・Classics Ethereal Library の
   音声ファイル。 全12話通しの朗読です。
◇ 日本語版は、 こちら に声優ナレーター佐々木健さん
   による素晴らしい朗読があります。

   ◇ 和訳は、センテンスごとの意訳になっています。
   個々の単語の意味をすばやく知りたい場合は こちら をクリックしてください。
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The old Devil had to give it up. He could not get the better of Ivan with soldiers. So he changed himself into a fine gentleman, and settled down in Ivan's kingdom. He meant to overcome him by means of money, as he had overcome Taras the Stout.
年とった悪魔はこの手段をすほかありませんでした。兵隊を使ったんじゃ、とてもイワンを取っちめることはできませんでした。そこでこんどは姿をかえて、立派な紳士に化けて、イワンの国に住みこみました。太っちょのタラスをやっつけたように、金の力でイワンをやっつけてやろうと考えたのです。

'I wish,' says he, 'to do you a good turn, to teach you sense and reason. I will build a house among you and organize a trade.'
「一つ私はあなた様にいいことをしたいと思います。よい智慧をお貸ししたいと存じます。で、まずお国に家を一軒たてて、商売をはじめましょう」と年とった悪魔は言いました。

'All right,' said Ivan, 'come and live among us if you like.'
「ああ、いいよ。この国へ来て、いっしょに住めばいいさ」とイワンは言いました。

Next morning the fine gentleman went out into the public square with a big sack of gold and a sheet of paper, and said,
翌くる朝この立派な紳士は、金貨の入った大きな袋と一枚の紙片かみきれを持って広小路へ出て、こう演説しました。

'You all live like swine. I wish to teach you how to live properly. Build me a house according to this plan. You shall work, I will tell you how, and I will pay you with gold coins.' And he showed them the gold.
「おまえたちは、まるで豚のような生活をしている。私はおまえたちに、もっといい暮し方を教えてやる。おまえたちは、この図面を見て一つ家をこさえてくれ。おまえたちは、ただ働けばよろしい。そのやり方は私が教え、お礼は金貨で払ってやる」 そう言って彼は金貨をみんなに見せました。

The fools were astonished; there was no money in use among them; they bartered their goods, and paid one another with labour.
馬鹿な人民たちはびっくりしました。彼らの間には、これまで金と言うものがありませんでした。彼らは品物と品物を取りかえ合ったり、仕事は仕事でかんじょうし合っていたのでした。

They looked at the gold coins with surprise. 'What nice little things they are!' said they.
みんなは金貨を見て、目を丸くしながら言いました。「こりゃまた何てきれいなもんだ」

And they began to exchange their goods and labour for the gentleman's gold pieces. And the old Devil began, as in Taras's kingdom, to be free with his gold, and the people began to exchange everything for gold and to do all sorts of work for it.
それで、彼らは品物をやったり仕事をしたりして、紳士の金貨と取っかえはじめました。年とった悪魔は、タラスの国でやったと同じように、金貨をどしどし使い、人民たちは何でもかでも、またどんな仕事でも金貨と取っかえるためにやってのけました。

The old Devil was delighted, and thought he to himself, 'Things are going right this time. Now I shall ruin the Fool as I did Taras, and I shall buy him up body and soul.'
年とった悪魔はほくほくし、「こんどはなかなか運びがいい。これじゃ、あの馬鹿もそのうちにタラス同様、身体からだからたましいまで俺のものにしてしまえるぞ」と思いました。

But as soon as the fools had provided themselves with gold pieces they gave them to the women for necklaces. The lasses plaited them into their tresses, and at last the children in the street began to play with the little pieces.
しかし馬鹿どもは、金貨を手に入れるとすぐ、それを女たちにやって首飾にしてしまいました。娘たちはそれをおさげの中に編みこみました。そして、しまいには子供たちが、往来のまん中で、玩具おもちゃにして遊びはじめました。

Everybody had plenty of them, and they stopped taking them. But the fine gentleman's mansion was not yet half-built, and the grain and cattle for the year were not yet provided.
誰もかも、金貨をたくさんもらって持っていました。そこでもう、もらおうとする者はなくなりました。けれども立派な紳士の家は、半分もできてはいないし、その年入用いりようの穀物や牛などの用意もできていませんでした。

So he gave notice that he wished people to come and work for him, and that he wanted cattle and grain; for each thing, and for each service, he was ready to give many more pieces of gold.
そこで働きに来てもらいたいことだの、穀物や牛などを買いたいことだのを知らせて、もっとたくさんの金貨をやることにしました。

But nobody came to work and nothing was brought. Only sometimes a boy or a little girl would run up to exchange an egg for a gold coin, but nobody else came, and he had nothing to eat.
しかし、働く人も、品物を持って来る人もありませんでした。ときたま男の子や女の子たちが走って来て、卵と金貨を取っかえてもらうくらいでした。他には誰も来なかったので、紳士は食物たべもの一つありませんでした。

And being hungry, the fine gentleman went through the village to try and buy something for dinner. He tried at one house, and offered a gold piece for a fowl, but the housewife wouldn't take it.
そこで立派な紳士は、空腹すきはらを抱えて何か食べるものを買おうと村へ行って、ある家に入りました。そして、鳥を一羽売ってもらおうと思って金貨を一枚出しましたが、そこのおかみさんは、それを受取ろうとはしませんでした。

'I have a lot already,' said she.
「あたしゃ、もうたくさん持っています」と言うのです。

He tried at a widow's house to buy a herring, and offered a gold piece.
こんどはにしんを買おうと思って、寡婦ごけさんのところへ行き、金貨を出しました。

'I don't want it, my good sir,' said she. 'I have no children to play with it, and I myself already have three coins as curiosities.'
「いりませんよ」と寡婦ごけさんは言いました。「あたしの家にゃ、それを持って遊ぶような子供はいないし、それに、珍しいもんだと思って、もう三枚もしまってあるから」

He tried at a peasant's house to get bread, but neither would the peasant take money.
彼はこんどは百姓家へ行って、パンと取っかえようとしました。けれどもやはり受取ってはもらえません。

'I don't need it,' said he, 'but if you are begging "for Christ's sake," wait a bit and I'll tell the housewife to cut you a piece of bread.'
「いらないよ。だが、おまえさんが『キリスト様の御名によって』と言うのなら、ちょっと待ちなされ、家内に話して一片ひときれもらってきてあげるから」と、お百姓は言いました。
(訳注: 『キリスト様の御名によって』というのは、ロシアの乞食や巡礼たちが、物乞いをするときに必ず言う言葉で、「御生ですから」とか、「どうかお願いですから」といった意味の言葉です。)

At that the Devil spat, and ran away. To hear Christ's name mentioned, let alone receiving anything for Christ's sake, hurt him more than sticking a knife into him.
それを聞くと、悪魔は唾を吐いて逃げ出しました。キリストの名を耳にしたり、ましてやその名によって物をもらうなどということは、悪魔にとっては、ナイフで突き刺されるよりも苦しいことなのです。

And so he got no bread. Every one had gold, and no matter where the old Devil went, nobody would give anything for money, but every one said, 'Either bring something else, or come and work, or receive what you want in charity for Christ's sake.'
こうして年とった悪魔はとうとうパンも手に入れることができませんでした。誰も彼も金貨を持っていたので、どこへ行っても、金で何一つ買うことはできませんでした。みんなたれもが、「何か他の品物を持って来るか、でなけりゃここへ来て働くか、またはキリスト様の御名によって、いるものをもらうがいい」と言います。

But the old Devil had nothing but money; for work he had no liking, and as for taking anything 'for Christ's sake' he could not do that.
しかし、年とった悪魔は、金より他には何一つ持っていませんでした。働くことは大きらいなことだし、「キリスト様の御名によって」物をもらうことなど、どうしたってできないことでした。

The old Devil grew very angry.
'What more do you want, when I give you money?' said he. 'You can buy everything with gold, and hire any kind of labourer.'
年とった悪魔はひどく腹がたってきました。
「俺が金をやると言うのに、ほかに何が欲しいと言うんだ。金さえありゃ何だって買えるし、どんな人夫だって雇えるんだ」と悪魔は言いました。

But the fools did not heed him.
'No, we do not want money,' said they. 'We have no payments to make, and no taxes, so what should we do with it?'
しかし馬鹿たちは、それに耳をかそうとはしませんでした。
「いいや、わしらには金は要らない。わしらにゃ別に払いがあるわけじゃなし、税金も要らないから、もらったところで使い道がないからな」と言うのです。

The old Devil lay down to sleep -- supperless.
年とった悪魔はひもじい腹を抱えて、ゴロリと横になりました。

The affair was told to Ivan the Fool. People came and asked him, '
すると、このことが、イワンの耳に入りました。人民たちがイワンのところへ来て、こうたずねたのです。

What are we to do? A fine gentleman has turned up, who likes to eat and drink and dress well, but he does not like to work, does not beg in "Christ's name," but only offers gold pieces to every one. At first people gave him all he wanted until they had plenty of gold pieces, but now no one gives him anything. What's to be done with him? He will die of hunger before long.'
「どうしたもんでしょう、立派な紳士がやって来て、飲み食いも着飾ることも好きなのに、働くのを嫌がります。『キリスト様の御名によって』物乞いするのも嫌がって、やたらに金貨ばかりくれようとします。世間じゃ、初めのうちはあの人の欲しがるものをくれてやったが、金貨がたくさんになったので、今じゃ誰もあの人にくれてやる者がありません。どうしたもんでしょう、あのままじゃえ死んでしまいます」

Ivan listened.
イワンはじっと耳を傾け、そして言いました。

'All right,' says he, 'we must feed him. Let him live by turn at each house as a shepherd does.'
「うん、そうか。じゃあ、養ってやらないとだめだな。羊飼いのように、一軒一軒かわり番こに養ってやることにしよう」
(訳注: 当時、ロシアの村では、羊飼いは村の家々で順番に食べ物と寝るところを提供されることになっていた)

There was no help for it. The old Devil had to begin making the round.
これよりほかに仕方はありません。年とった悪魔は、かわり番こに家々をまわって食事をさせてもらうようになりました。

In due course the turn came for him to go to Ivan's house. The old Devil came in to dinner, and the dumb girl was getting it ready.
そのうちに番が来て、イワンの家へ行くことになったので、年とった悪魔は御馳走になりにやって来ました。すると、おしの娘が食事の仕度をしているところでした。

She had often been deceived by lazy folk who came early to dinner -- without having done their share of work -- and ate up all the porridge,
おし娘は今までに、たびたび怠け者にだまされていました。そんな者に限って、ろくすっぽ受け持ちの仕事はしないで、誰よりも食事に早くやって来て、おまけに人の分まで平げてしまうのです。

so it had occurred to her to find out the sluggards by their hands. Those who had horny hands, she put at the table, but the others got only the scraps that were left over.
そこで娘は、手を見て怠け者を見分けることにしました。ごつごつした手の人はすぐテーブルにつかせましたが、そうでない人には、食べ残しのものしかくれてやりませんでした。

The old Devil sat down at the table, but the dumb girl seized him by the hands and looked at them -- there were no hard places there: the hands were clean and smooth, with long nails. The dumb girl gave a grunt and pulled the Devil away from the table.
年とった悪魔はテーブルにつきました。すると、おし娘はさっそくその手をとらえて調べにかかりました。ところが手にはちっとも硬いところがありません。すべすべしていて、爪が長くのびていました。おし娘はうなりながら、悪魔をテーブルから引き離しました。

And Ivan's wife said to him, 'Don't be offended, fine gentleman. My sister-in-law does not allow any one to come to table who hasn't horny hands. But wait awhile, after the folk have eaten you shall have what is left.'
するとイワンのおよめさんが言いました。「悪く思わないでください。義妹いもうとはごつごつした手を持った人でないと、テーブルにはつかせないんです。でもちょっとお待ちなさい。みんなが食べてしまったら、後でその残りをあげますから」

The old Devil was offended that in the King's house they wished him to feed like a pig.
年よった悪魔はひどく気を悪くしました。王さまの家では自分を豚同様に扱っているのです。

He said to Ivan, 'It is a foolish law you have in your kingdom that every one must work with his hands. It's your stupidity that invented it. Do people work only with their hands? What do you think wise men work with?'
そこでイワンに言いました。「誰もが手を使って働かなきゃならないなんて、この国には何という馬鹿気ばかげた決まりがあるんですか。こんな決まりができたのは、あなたが馬鹿だからです。人間というものは、手だけで働くものですか? 賢い人は何で働くか知っていますか?」

And Ivan said, 'How are we fools to know? We do most of our work with our hands and our backs.'
するとイワンは言いました。「おらたちのような馬鹿にどうしてそんなことがわかるもんか。おらたちは、大抵の仕事は手や背中を使ってやるんだ」

'That is because you are fools! But I will teach you how to work with the head. Then you will know that it is more profitable to work with the head than with the hands.'
「だから馬鹿と言うんです。じゃあ、頭で働く方法を教えてあげましょう。そうすれば、手より頭を使って働く方が、どんなに得かわかるでしょう」

Ivan was surprised. 'If that is so' said he, 'then there is some sense in calling us fools!'
イワンはびっくりして、「それが本当なら、おらたちを馬鹿だと言うのももっともだな」と言いました。

And the old Devil went on. 'Only it is not easy to work with one's head. You give me nothing to eat, because I have no hard places on my hands, but you do not know that it is a hundred times more difficult to work with the head. Sometimes one's head quite splits.'
そこで年とった悪魔は言葉をつづけて、
「しかし頭で働くのは容易なことじゃありません。あなたがたは、私の手に硬いところがないと言って食物たべものをくれないが、頭で働くことはそれより百倍もむずかしいと言うことを知らないんです。時には全く頭が裂けてしまうこともありますよ」

Ivan became thoughtful.
'Why, then, friend, do you torture yourself so? Is it pleasant when the head splits? Would it not be better to do easier work with your hands and your back?'
イワンは考え込みました。
「じゃあ、どうしておまえさん、そんなに自分を苦めるんだね。頭が避けるのが、いい気持なのかね。それより手や背中を使って、もっと楽な仕事をしたらよさそうなもんだがなあ」

But the Devil said, 'I do it all out of pity for you fools. If I didn't torture myself you would remain fools for ever. But, having worked with my head, I can now teach you.'
けれども悪魔は言いました。
「私がそんなことをするのも、みんな馬鹿なあなたがたがかわいそうだからですよ。私がそうしないと、あなたがたはいつまでたっても馬鹿のままだ。だが私は頭で仕事をしたおかげで、今それをあなたがたに教えてあげることができるんですからね」

Ivan was surprised.
'Do teach us!' said he, 'so that when our hands get cramped we may use our heads for a change.'
イワンはびっくりしました。
「じゃ、教えてくれ。手がしびれた時に、頭で仕事ができるようにな」

And the Devil promised to teach the people.
悪魔は人民たちに教えることを約束しました。

So Ivan gave notice throughout the kingdom that a fine gentleman had come who would teach everybody how to work with their heads; that with the head more could be done than with the hands; and that the people ought all to come and learn.
そこでイワンは、あらゆる人に頭で働くことを教えることのできる立派な先生が来たこと、頭を使えば手を使うよりもたくさんの仕事ができること、人民たちは残らずこの立派な先生に教わりに来てよく習わなければならないことを、国中にふれさせました。

Now there was in Ivan's kingdom a high tower, with many steps leading up to a lantern on the top. And Ivan took the gentleman up there that every one might see him.
さて、イワンの国には一つの高い塔がありました。その塔には、てっぺんまで登れる階段がついていて、てっぺんにはランプが吊り下げてありました。イワンは人民たちが顔をよく見ることができるように、立派な紳士を塔のてっぺんにつれて行きました。

So the gentleman took his place on the top of the tower and began to speak, and the people came together to see him.
紳士は塔のてっペンに立って演説をはじめました。人民たちは彼を見ようとして集まって来ました。

They thought the gentleman would really show them how to work with the head without using the hands. But the old Devil only taught them in many words how they might live without working.
人民たちはこの紳士が手を使わないで頭で働く方法を見せてくれるものと思っていました。しかし悪魔は、どうしたら働かないで生活くらしを立てて行けるかということを、くりかえしくりかえし話しただけでした。

The people could make nothing of it. They looked and considered, and at last went off to attend to their affairs.
人民たちは何が何だか、ちっともわかりませんでした。人民たちは紳士を見、考え、また見ましたが、とうとうしまいにはめいめいの仕事をするために立ち去って行きました。

The old Devil stood on the tower a whole day, and after that a second day, talking all the time.
年とった悪魔は塔のてっペンに一日中立っていました。それから二日目もやはりたてつづけにしゃべりました。

But standing there so long he grew hungry, and the fools never thought of taking food to him up in the tower. They thought that if he could work with his head better than with his hands, he could at any rate easily provide himself with bread.
しかしあまり長くそこに立っていたためにすっかりお腹をすかしてしまいました。しかし、たれもが塔の上へ食物たべものを持って行くことなど考えもしませんでした。手で働くよりももっとよく頭で働くことができるとしたら、パンの用意くらいは簡単なことだろうと思ったからでした。

The old Devil stood on the top of the tower yet another day, talking away. People came near, looked on for awhile, and then went away.
その次の日も、年とった悪魔は塔のてっペンに立ってしゃべりました。人民たちは集まって来て、ちょっとの間立って見ていましたが、すぐ去って行きました。

And Ivan asked, 'Well, has the gentleman begun to work with his head yet?'
イワンは人民たちにたずねました。「どうだ、紳士は頭で仕事をしはじめたか?」

'Not yet,' said the people; 'he's still spouting away.'
すると人民たちは言いました。「いいえ、まだです。あいかわらずペラペラとしゃべってばかりいます」

The old Devil stood on the tower one day more, but he began to grow weak, so that he staggered and hit his head against one of the pillars of the lantern.
年とった悪魔はまた次の日も一日塔の上に立っていましたが、体が弱って来てよろめきだし、ランプの柱へ頭を打っつけました。


One of the people noticed it and told Ivan's wife, and she ran to her husband, who was in the field.
それを人民の一人が見つけて、イワンのおよめさんに知らせました。イワンのおよめさんは、野良に出ているイワンのところへ、かけつけて行きました。

'Come and look,' said she. 'They say the gentleman is beginning to work with his head.'
「来てごらんなさい。あの紳士が頭で仕事をやりはじめたそうですから」とイワンのおよめさんは言いました。

Ivan was surprised. 'Really?' says he, and he turned his horse round, and went to the tower.
「ほう、そりゃほんとかな」とイワンは言って、馬を向け直して、塔へ行きました。

And by the time he reached the tower the old Devil was quite exhausted with hunger, and was staggering and knocking his head against the pillars.
ところがイワンが塔へ行きつくまでに、年とった悪魔はお腹が空きすぎて気力がなくなり、よろよろとよろめいては頭を柱に打ちつけていました。

And just as Ivan arrived at the tower, the Devil stumbled, fell, and came bump, bump, bump, straight down the stairs to the bottom, counting each step with a knock of his head!
そしてイワンが塔へ着いたとき、年とった悪魔はつまずいてころび、そのままゴトン、ゴトン、と階段を一つ一つ頭で打ちつけながら地べたまで落ちて来ました。

'Well!' says Ivan, 'the fine gentleman told the truth when he said that "sometimes one's head quite splits." This is worse than blisters; after such work there will be swellings on the head.'
「ほほう、頭が裂けることもあるというのはやっぱりほんとだったな。だがこれは水腫みずぶくれよりまだ悪い。こんな仕事をしたら、頭はコブだらけになってしまうな」とイワンは言いました。

The old Devil tumbled out at the foot of the stairs, and struck his head against the ground. Ivan was about to go up to him to see how much work he had done -- when suddenly the earth opened and the old Devil fell through.
年とった悪魔は階段の一ばん下のところで一回転して頭を地べたへ突っ込みました。イワンは紳士がどのくらい仕事をしたか見に行こうとしましたが、そのとき急に地面がぱっとわれて悪魔は中へ落ちてしまいました。

Only a hole was left.
あとには穴が一つの残っただけでした。

Ivan scratched his head.
'What a nasty thing,' says he. 'It's one of those devils again! What a whopper! He must be the father of them all.'
イワンは頭をかきました。
「なんて汚らしいやつ。またあの悪魔の仲間だ。大ほら吹きめ。きっとあいつらの親爺だな」

Ivan is still living, and people crowd to his kingdom. His own brothers have come to live with him, and he feeds them, too.
イワンは今でもまだ生きています。人々はその国へたくさん集まって来ます。彼の二人の兄たちも、一緒に住もうとやって来ました。イワンはそれも養ってやります。

To every one who comes and says 'Give me food!' Ivan says, 'All right. You can stay with us; we have plenty of everything.'
「どうか食物たべものをください」と言って来る人には誰にでも、イワンは、
「うん、いいよ。一しょに暮すがいいさ。ここには何でもどっさりあるからな」と言いました。

Only there is one special custom in his kingdom; whoever has horny hands comes to table, but whoever has not, must eat what the others leave.
ただイワンの国には、特別なならわしが一つありました。それは、手のゴツゴツした人なら誰でも食事のテーブルへつけるが、そうでない人は他の人の食べ残しを食べなければならないことです。

(終り)


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  ◇ Nausicaa of the Valley of the Wind 5 風の谷のナウシカ
  ◇ Nausicaa of the Valley of the Wind 6 風の谷のナウシカ
  ◇ Nausicaa of the Valley of the Wind 7 風の谷のナウシカ
  ◇ Castle in the Sky 1 天空の城ラピュタ
  ◇ Castle in the Sky 2 天空の城ラピュタ
  ◇ Castle in the Sky 3 天空の城ラピュタ
  ◇ Castle in the Sky 4 天空の城ラピュタ
  ◇ Kiki's Delivery Service 1 魔女の宅急便
  ◇ Kiki's Delivery Service 2 魔女の宅急便
  ◇ Kiki's Delivery Service 3 魔女の宅急便
  ◇ Kiki's Delivery Service 4 魔女の宅急便
  ◇ Princess Mononoke 1 もののけ姫
  ◇ Princess Mononoke 2 もののけ姫
  ◇ Princess Mononoke 3 もののけ姫
  ◇ Princess Mononoke 4 もののけ姫
  ◇ Princess Mononoke 5 もののけ姫

▼ スタジオジブリ の DVD 
   ◇ となりのトトロ
   ◇ 天空の城ラピュタ
   ◇ 耳をすませば
   ◇ 魔女の宅急便
   ◇ 風の谷のナウシカ
   ◇ 紅の豚
   ◇ もののけ姫
   ◇ 「もののけ姫」はこうして生まれた。
   ◇ ハウルの動く城
   ◇ ハウルの動く城 特別収録版
   ◇ 千と千尋の神隠し
   ◇ 未来少年コナン
   ◇ 平成狸合戦ぽんぽこ
   ◇ 海がきこえる
   ◇ ジブリがいっぱいSPECIALショートショート
   ◇ 人間は何を食べてきたか 第1巻
   ◇ 柳川堀割物語
   ◇ 世界・わが心の旅 (2巻セット)
   ◇ 宮崎駿プロデュースの1枚のCDは、こうして生まれた。


4件のコメント

[C73] 懐かしい童話です

子供の時に読みました
でもタイトルは
「イワンのバカ」だったような???
私の記憶違いでしょう
ごめんなさい^^;

本当に懐かしかったです。
ありがとうございます。

[C74] イワンのバカ

菊池寛の訳書名も「イワンの馬鹿」となっていたのですが
ここでは「馬鹿のイワン」に改めました。

「馬鹿のイワン」だと、
「『馬鹿』と呼ばれているイワン」という意味になりますが、
「イワンの馬鹿」だと、
「イワンに何かの行為を期待していた人が
その期待を裏切られた時に、思わず発した独り言」
という感じになると思います。
たとえば「父ちゃんのバカ! おみやげ買って来るって言ってたじゃないか!」
のように。
  • 2014-10-03
  • ゆうこ
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[C75] 勉強になります!

はじめまして。
最近ブログを初めまして、勉強の為にブログを拝見させて頂きました!
次のブログ記事更新お待ちしていますね。
  • 2014-10-27
  • 投資コーディネーター 高野
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[C76] 高野さん、ようこそ ♪

投資コーディネーターの方が、私のブログなんかに興味を持ってくださるなんて、びっくりです。
投資なんて、わたしには全く縁のない、月よりも遠い世界のように思っていましたのに。

今、わたしにとってはものすごく面白い動画(精神世界の話)を、英和対訳のテキストを添えて紹介しようとしているのですが、音声のテープ起こしの作業に手間取っています。
あ~あ、自動テープ起こしソフトが欲しいな。。。


  • 2014-10-27
  • ゆうこ
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